あ〜り〜の多幸ぼうる

ドラマチックあげるよ

星野源はそんなこと気にしない(夢メモ)

今朝、胸くそ悪い夢を見た。

あまりにもリアリティがあって、それでいて徹底的にファンタジーなのだが

その均衡が絶妙に不愉快なのである。

 

 

 

そこはどこかの会社のオフィス。

私を含む新入社員は、入社してまだ3ヶ月程度で、行き場の不確定なやる気と体力を持て余しながら、懸命に日々の業務に追われる。

 

その日は、年に2度訪れる人事査定の日だった。

 

うちの会社はちょっと変わっていて、この重大かつシリアスなイベントを、

全力で茶化す。

社員達の机の上には、さまざまなお菓子の山と、ホッチキス、コピー用紙といった事務用品のうずたかく積まれたストック。

ほとんどハロウィンのような祝祭的なムードが社内を満たす。

これらは単なる気休めではない。

すべては「査定当日に会社のために経費購入した物品の"金額"がそのまま自らの人事評価値に上乗せされる(!)」

というあまりに乱暴でトガった意味不明の慣習のためである。

これらは毎年、最初の人事査定の日の前日に、新入社員にこっそり先輩社員から告げられる。

 

もちろん、後輩達は驚きあわてふためく。

そんな陳腐なルールには乗らない、とシラを切り通しながらも明らかにアウトな企業体質には目をつむる誇り高き"常識人"がいれば、

良心と出世欲のはざまにムクムクと立ち上がる葛藤に悶え、その晩粛々と執り行われた深い晩酌と自己問答の末に、翌朝力の入った退職願を握りしめて出社する現代のサムライ、

一目散に銀行へ向かいありったけの貯金を引き下ろすと、あらゆる部署に備品の欠品はないか確認しにゆく欲望の正直な実践者、

などなど、その行動はまさに十人十色である。

 

対する先輩社員たちも、"その日"を大幅に先回りして自分の可愛い、健気な後輩君だけにこの重大な秘密を教えたりすることは、ぜったいに、ぜったいに許されない。

先輩社員達は互いに互いのモラルを厳しく監視しあっていて、ぬけがけは厳重に阻止されているのだ。

厄介なのは、これらの珍妙かつ規格外の習わしが、不思議な利害の一致でこの会社の社員には好意的に受け入れられ、誰もが強要されているといった不信感なしに心の底から信頼し純粋に楽しんでいる、という点にあった。

 

 

ともかく、そんな訳で、入社3ヶ月目たる私ももれなくその日を迎えたわけであるが、どういう訳か、このことを、前日に聞かされることはなかった。

査定当日、会社に行くと、なにやら同期たちがせわしなく買い物袋を手に会社の内外を往来している。

みんな、活力があって素晴らしいな、などと他人事のように眺める呑気な私の耳に、突如とびこんできた高らかな号令。

「それでは!ただいまより、本年度第一回目の人事査定結果を発表いたします!」

 

私はおどろいた。

その声の主が、

星野源であったからである。

 

何を言っているかわからない方が大半だと思う。

私にとっても、もちろんそのシチュエーションは圧倒的なミステリーであった。

 

だが、このさい、意味不明のイベントが決行されたことへの疑念などどうでもいい。

 

 

星野源が、いる

 

そこに。

うちのオフィスのホワイトボードの前で、

背広を着て、

人事評価ランキング(カラーマジック手書き)の模造紙を持って。

星野源がいる

 

 

「惜しくも最下位となったのは...カナさん!伸びシロしかない!」

フゥーー!パチパチパチ!

恥ずかしそうにぺろりと舌を出すカナさん。

 

いやいや、

いやいやいやいやいやいや。

 

どこから突っ込んだらいいかわからない。

カナさんて、誰やねん。

すると私の隣で順位発表を見守っていた社長がおちゃめな調子でこう言う。

 

いやぁ、星野君!カナさんをウチに連れて来たのは君なんだからねぇ!

この子、ぜんぜん、使えないんだよぅ!たのむよ!

 

星野人事部長はバツが悪そうに、あのさわやかな笑顔で言う。

「あっはっは、すみません。えへへ」

アッハッハッハッハ、ドッカン、ドッカン。

 

いやいやいやいや、

いやいやいやいやいや................................

 

.....えええ〜......   (どん引き)

 

 

さすがに、どん引きである

しかしなんと、カナさんの次に呼ばれたのはなのである。

 

星野人事部長はまたも屈託の無い笑顔で私に言う。

「いやぁ〜、まだまだ、これからですよ!一緒にがんばろう!」

オォ〜!パチパチパチパチ

 

ええ。。。

ええええええ〜〜〜。

 

私の隣にいた社長も、優しい笑顔で言う。

君もちょっと、自己中心的なところがあるからね。もう少し、周りに目を向ける事を心がけてみよう。」

 

はい。それはもう、まさしく私の至らぬところでございまして。

精進致します。

なんだか妙に納得させられ、しゅんとしてしまう自分と、「いやいやいやそんなん言うてる場合ちゃいますやん」と畳みかかる私の心に住む千原ジュニア兄貴。

 

 

いょっ!がんばれ〜〜!

パチパチパチ........

 

それをまた優しく、暖かく包み込む、オーディエンス先輩方の声援。

 

 

こうしてその後も続々と社員の名前は呼ばれてゆき、笑顔と涙で彩られた第一回人事査定は大盛況のうちに幕を閉じようとしていた。

 

と、その前に、

途中ではさまれた途中休憩の20分、私はずっと心に抱えていた違和感の答えを求めて、さりげなく、

星野部長のところへ歩み寄る。

「あのう。これって...いつのまに、評価されていたんでしょうか。

これほど社員の得点に差がつくようなイベントはこれまでの3ヶ月という短い間には、なかったように思うのですが。。」

 

星野部長は困った顔で少し笑うと、あはは、まあね、とかなんとかいって軽くかわす。

ゼロ回答である。

納得のいかない気持ちを飲み込み、そっとその場を立ち去る私のあとを、数秒して、彼、星野源は小走りに追いかけてくる。

そして小さく耳打ちする。

 

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それでも一度は申し出を断る、世渡りの達者なにくい男。どうせ教えてくれることはお見通しだ

 

 

「実は僕が、人事評価として日頃の社員の業務への取り組みを"つけて"て。それが、係数として評価値にかかってくるんです。だけど、そんなのよりずっとデカいのが、前日に教えられたと思いますけど、あの経費購入なんです。あれは買った備品の合計金額が、そのまま数値として上乗せされますから。」

 

 

なるほど、この野郎。

許さねえ。

 

前日になんでか教えてこなかった先輩も、

それを呑気に眺めていた先ほどまでの自分も、

こんな意味不明なルールを喜んで遵守してるおめえたち全員も。

そして、なんだかそれによって結果的に円滑なコミュニケーションが実現されている、この世の不条理全般も。

 

ゆるさねえ。

 

そして、星野源、おめえは、ちょっと、近い。

息がかかっていますけど。

なんか甘い香りしてますけど。

ありがとうございます!!

ほんと、スミマセン!

もっともっと、頑張ります!

 

 

 

 

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なんのこっちゃ。死んで詫びます。嘘です、まだまだ死にたくありません。

 

確かにあれは、不愉快で、どこまでも胸くその悪い、

最大級に悪質で不純度の高い「悪夢」 +NightMare+ そのものだったわけだが

あのふいうちの急接近によって、無理矢理帳消しにされたような気がして、

そこも含めて全体的に超憎い悪夢であった。

なんの戒めなんだろう。

 

 

こんな夢を見てしまったから、朝ご飯をたべているときもずっと、

夢のつづきを見ているかのように「星野源はマジでスゲエ」とぶつぶつ言っていたら

今朝帰省で帰って来ていた妹は「星野源ってぜんぜん好きになれない」とつぶやいた。

 

ああ、わかるよ、その気持ち、

私だって、べつに好きだと意識的に思った事なんてない。

けどな、妹よ、

星野源はそんなこと気にしない

 

奴は、誰に好かれようが、誰に嫌われようが、そんなの全く構わない。

ただ、彼のやり方で今日も表現していくだけなのだ。

そこに、他者の評価なんてものが挟み込まれる余地はない。

 

ああ、だから彼は強いのかもしれない。

あれだけ他人の人事評価に関与しておきながら(まぁ、私の身勝手な夢では)

そのどこか「他者の評価」へ対する醒めた目線

彼を彼たらしめているのであり、

あのしたたかさや図太さ、愛嬌や清々しさを産んでいる。

 

そういうことに、きっと私は気付いていて、

うーん、だからやっぱり適わないなあって思ってしまう。

少なくとも、嫌いにはなれないのだ。

 

私の図々しさも、まだまだ産毛の毛穴の奥の毛乳頭くらいなモンなんだろう。

 

 

いや、なんのこっちゃ。

 

 

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◎本日の右手ライティング(筆ペンイラスト)解説

「耳打ちする星野源

なかなか巧く描けたのではなかろうか。個人的には口元に添える手元からあの恨めしさが存分に醸されていて、満足である。

ちゃっかり頬を赤く染める右の女の愛嬌にも注目。

 

 

※右手ライティングとは、普段左利きの筆者が、「永遠に熟練しない味わい」を求めてその筆をふるえる右手に譲り挑戦するどこまでもユルユルなイラストレーションと、それを支える美学を指す概念の総称である。